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イベント情報

館内展示 (10月18日〜2012年2月18日)
「没後10年  山田風太郎再臨」展

「没後10年  山田風太郎再臨」展

 一世を風靡した風太郎忍法帖ながら、いま山田風太郎の名前を聞いて忍法帖しか思い浮かべない人はむしろ少数派だろう。空前の忍法ブームが去ったあとに育ってきた読者人口が増えたせいだけではない。忍法帖はその後もおりおり復刊され、漫画『バジリスク』のように違うメディアにアレンジされて新たな魅力を発見されたりもしている。

 しかし忍法帖は豊穣な風太郎ワールドの一部でしかなく、その全体像に注目が集まっているのだ。初期のトリッキーな探偵小説、豊臣秀吉の英雄像を覆すような逆説史観あふれる時代小説、明治時代をガラス絵さながら色鮮やかに再現しつつ無類に面白い物語を構築した作品群……。また『戦中派不戦日記』では青年の眼で日本の現状を透徹し、晩年には老いと死を飄々と語り、市井の哲学者の風貌さえ感じさせた。

 絶頂をきわめ、翳りが見える前にいち早く次なるジャンルに挑戦してきたことに、終生人気作家の座を保ち、没後十年の今もなお飽かずに読まれる秘密があるだろう。だが、それ以上に、ジャンルを超えて共通する精神――この住みにくい世の中を真剣に誠実に生きるには、すべてを笑いのめすしかないという諧謔の心が、同じように住みにくさを託っている現代人を魅惑して離さないのだ。

 これこそ、忍法帖に限らず、全作品に通底する山田流忍法の奥義にほかならない。その秘伝をわずかなスペースで公開するのは不可能――というより、どれだけスペースがあっても足りないだろう。プロ作家にも熱烈なファンが多く、そうした人々の作品のあるものは風太郎忍法の分身の術による成果にも見える。それらをも含め、広大な風太郎ワールドの入口だけでも示せれば幸いである。

秋の夜長に探偵小説 光文社文庫『悪魔黙示録「新青年」一九三八』刊行記念
10月15日(土)〜11月19日(土)

死の快走船 「探偵小説」は懐かしいだけ? いやいや、今もその妖しい魅力は色あせていない。本年8月、ミステリー文学資料館の編で、1938(昭和13)年の「新青年」に発表された傑作のアンソロジーが刊行されたが、作品そのものだけでなく、戦前の探偵小説本を愛好する人は多い。その独特の装幀もまた、現代にはない魅力である。

 日本に探偵小説を紹介した黒岩涙香の創作『無惨』や、その涙香の独特の翻訳で話題を呼んだ『幽霊塔』は、探偵小説が日本にようやく紹介された頃、100年以上も前の刊行である。

 江戸川乱歩の最初の著書である『心理試験』は歴史的な一冊だ。乱歩とともに探偵小説界を支えた小酒井不木、人気作家として多くの作品を発表した甲賀三郎と大下宇陀児、検事出身の浜尾四郎は、大正末期から昭和初めにかけての探偵小説ブームの代表的作家である。

 『ドグラ・マグラ』と『黒死館殺人事件』は奇書としてつとに有名だ。『鬼火』で横溝正史は耽美的作風を確立した。戦前に数少ない本格の短編集として『死の快走船(ヨツト)』は忘れがたい。『船富家の惨劇』と『白日夢』は、戦前では珍しい書き下ろし長編募集の入選作である。そして木々高太郎は、新人ながら、昭和10年前後の探偵小説ブームの中心にいた。

 新幹線も携帯電話もない時代に、探偵作家たちはどんな謎をちりばめたのか。秋の夜長に読み耽ってみるのも一興だろう。

※展示資料

黒岩涙香『無惨』[改装本]
明治23年2月21日初版
上田屋
A・M・ウィリアムソン作/黒岩涙香翻案『幽霊塔』[前編]
明治39年7月15日8版
扶桑堂
江戸川乱歩『心理試験』
大正14年7月18日初版
春陽堂
小酒井不木『疑問の黒枠』
昭和2年7月25日初版
波屋書房
江戸川乱歩『蜘蛛男』
昭和5年10月20日初版
大日本雄弁会講談社
浜尾四郎『博士邸の怪事件』
昭和6年9月7日初版
新潮社
甲賀三郎『盲目の目撃者』
昭和6年9月7日初版
新潮社
夢野久作『ドグラ・マグラ』
昭和10年1月15日初版
松柏館書店
小栗虫太郎『黒死館殺人事件』
昭和10年5月12日初版
新潮社
横溝正史『鬼火』
昭和10年9月10日初版
春秋社
江戸川乱歩『石榴』
昭和10年10月25日初版
柳香書院
蒼井雄『船富家の惨劇』
昭和11年3月20日初版
春秋社
北町一郎『白日夢』
昭和11年4月20日初版
春秋社
大阪圭吉『死の快走船』
昭和11年6月5日初版
ぷろふいる社
大下宇陀児『凧』
昭和11年11月5日初版
春秋社
木々高太郎『柳桜集』
昭和12年3月20日初版
版画荘
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